2015/04/01 - LIFESTYLE


本にまつわるエトセトラ / 「どくとるマンボウ航海記」


本にまつわるエトセトラ / 「どくとるマンボウ航海記」

今から数年前、人生初の海外旅行の際に、旅行かばんに詰め込んだのが「どくとるマンボウ航海記」であった。

詰め込みはしたが、私は旅先で本を読まない主義である。
旅に出たならば、旅先での出来事を楽しむべきだと思っている。

とはいえ、旅行の際には何故だか本を欠かさずに持って行ってしまう。
ろくに読みもしないくせに、今回は何を持っていこうかと楽しみながら本を選んでしまう自分がいる。
長野に行くならこの本だ、沖縄に行くならこの本だ、大阪に行くなら…、と旅先に相応しい本を選び、旅行かばんに詰め込むのである。

それでも結局、ほとんど読まない。
若かりし頃は一人旅を好んでしたものだが、一人であっても、旅先で項をめくることは非常に稀だ。
しかし、人生初の海外旅行の時ばかりは、持参した本が大活躍した。

高校時代の友人と、久々の再会も兼ねて20代最後の思い出にと海外旅行を企画した。
行き先はタイ。
お互い海外は初めてで、旅行に寄せる期待は大きかった。
だが、旅先でのひょんなことから仲違いをしてしまう。仲違いは少々もつれ、せっかくの旅行であるのに別行動をする羽目に。

旅行の計画をすべて友人任せにしていた私は、生まれて初めての異国の地で、右往左往してしまう。
それに疲れて、ひとり早めにホテルに戻る。
戻ったはいいが、ホテルの鍵は友人が持って出てしまっていた。
フロントにどのように説明すればいいかまるでわからず、仕方なくホテルのロビーで開いたのが、この「どくとるマンボウ航海記」であった。

それはとても愉快な旅行記で、沈んだ心を楽しい気持ちにさせてくれた。
嫌な思い出ばかりで終始しそうであった初めての海外旅行を、すんでのところで救ってくれた一冊である。

それからというものの、その友人とは疎遠になってしまった。
それでも、あれから数年経った今ならば、当時のことを笑って話せる気がしている。
北杜夫さんのような、愉快な語り口でもって。

・どくとるマンボウ航海記
著者/北 杜夫
出版社/新潮社(新潮文庫)
発行日/1965年2月28日
ISBN 4-10-113103-1


久米成佳
会社勤めをする傍ら、週末ライターとして活動中。
読書と農業と山登りが趣味。
好きな言葉は「晴耕雨読」

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