2015/01/16 - LIFESTYLE


本にまつわるエトセトラ/去年ルノアールで  せきしろ


本にまつわるエトセトラ/去年ルノアールで  せきしろ

この本の表紙を、初めて本屋で見かけた時に、「まさか!」と思った。

これは何かの間違いだ、私は今夢を見ているに違いない。
その証拠に、鼻毛を一本抜いてみよう。夢ならば痛みを感じないはず………痛い!
猛烈な痛みとともに、目の前に映っているモノが現実であると認識された。
そして、直後にハクション! という大きなクシャミの音が、静かな店内に響き渡った。

何故それほど驚いたのかというと、この「去年ルノアールで」は過去に私が愛読していた雑誌「relax」に連載されていたコラムで、私はこのコラムを読みたいが為に雑誌を定期購読していたほどであった。

ならば、素直に喜んで購入すればよいものであるが、そうはいかなかった。
この連載コラム(確か、連載時は「ルノアールで休日を」であった)は、雑誌の巻末にちょこっと掲載されているだけの、いわばオマケのような存在であったからだ。
雑誌はすでに休刊になっているのに、オマケが一冊の本になるなんて!
実は、人気があったのか、このコラムは!

内容的には実に下らないものだ。
ルノアールという喫茶店で繰り広げられる、めくるめく妄想。
その妄想は、毒にも薬にもならないものだが、思わずクスリと笑ってしまうボキャブラリーがあった。
その下らなさが、大好きでたまらなかった。

大好きだったコラムが書籍化されているのを知った感動と驚き、そして、鼻毛を抜いた時の衝撃的な痛みにより、私の目からは涙が溢れ出た。
この時の涙は、生涯忘れえぬものに……なるはずもないだろう。

・去年ルノアールで
著者/せきしろ
出版社/マガジンハウス
発行日/2006/2/23


久米成佳
会社勤めをする傍ら、週末ライターとして活動中。
読書と農業と山登りが趣味。
好きな言葉は「晴耕雨読」

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